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2008/09/08|

 男女自殺率格差問題が深刻なフィンランド

 高橋祥友『自殺予防』(岩波新書)161頁は、「次に国のレベルでの自殺予防対策が成功した例を見ていこう」として、フィンランドの事例をあげている。

 フィンランドは自殺対策で成功した国とされることが多く、【ファンキー通信】自殺予防はフィンランドから学べ!などの記事もある。

 世界各国の男女別自殺率の推移(WHO)にフィンランドのPDFがある。

 フィンランドの1950年から2004年までの10万人当たりの男女別自殺率

1950年 全体 15.5 男性 26.5 女性 5.4 男女格差 約4.91倍
1955年 全体 20.0 男性 32.4 女性 8.5 男女格差 約3.81倍
1960年 全体 20.4 男性 32.7 女性 8.9 男女格差 約3.67倍
1965年 全体 19.8 男性 32.2 女性 8.1 男女格差 約3.97倍
1970年 全体 21.3 男性 34.4 女性 9.2 男女格差 約3.74倍
1975年 全体 25.0 男性 40.6 女性 10.4 男女格差 約3.9倍
1980年 全体 25.7 男性 41.6 女性 10.4 男女格差 4倍
1985年 全体 24.6 男性 40.4 女性 9.8 男女格差 約4.12倍
1990年 全体 30.3 男性 49.3 女性 12.4 男女格差 約3.98倍
1995年 全体 27.2 男性 43.4 女性 11.8 男女格差 約3.68倍
2000年 全体 22.5 男性 34.6 女性 10.9 男女格差 約3.17倍
2004年 全体 20.3 男性 31.7 女性 9.4 男女格差 約3.37倍

 フィンランドの1990年 男性 49.3 女性 12.4 男女格差 約3.98倍、1995年の男性 43.4 女性 11.8 男女格差 約3.68倍は、男女の自殺率の高さと男女格差の開きからいって、自殺率の統計上で最悪の部類に入るだろう。
 
 この統計を見ると1975年から1995年までの特に高かった自殺率が最近になって少し下がっただけだ。2004年の全体の自殺率は1960年と同じくらいで、1955年と1950年のほうが全体の自殺率が低い。

 フィンランドが自殺対策先進国と言われる際に、男女の自殺率格差問題は全くと言っていいほどに考えられていない。単に、全体の自殺率が増えたか減ったかが焦点になっている。フィンランドの男女自殺率格差は、自殺対策先進国とは考えられないくらいに開いている。

 フィンランドは、男女平等が進んだ国と言われることもあり、それと自殺率の問題が重ね合わせられて論じられることがある。

 高橋祥友『自殺予防』162頁に「フィンランドに関する基礎知識」の項目があり、以下のことを書いている。

北欧の一院制の議会制民主主義国であり、他の北欧諸国とともに、女性の社会的進出が顕著である。一九〇六年にはヨーロッパ初の女性選挙権が認められた。一九九九年の総選挙では、二〇〇名の議員中七四名が女性。二〇〇〇年には、初の女性大統領が誕生した。二〇〇五年には、十八閣僚中八のポストが女性であった。



 こういう言説が意味するところは、女性の社会進出が進み、女性の政治家が増えて、女性の大統領が出るまでの国だから、自殺対策が進んでいるということだ。

 だが、女性の大統領が出て、女性の政治家がいくら増えても、男女の自殺率格差は一向に縮小することはない。フィンランドの例を見ても、女性の政治家や大統領が出るまでに女性の社会進出が進んでも、男女の自殺率格差は開いたままだ。

 女性の社会進出が進むとこんな特典がありますよと言って、男女の自殺率格差が縮小しますよとか言うのはやめるべきだ。女性の社会進出の問題は、女性の社会進出対策として促進すればいいことで、何かのおまけみたいに色んなものをくっ付けては、根拠がないと反論されるものばかりではどうしようもない。

 フィンランドでも、男性の人命問題が無視され、それよりも些細な他の女性問題に予算が使われているのだろう。世界的に見ても、男女の自殺率格差や男女の平均寿命という男性の人命問題が重視されることはない。

 若桑みどり『戦争とジェンダー』(大月書店)78頁にあるように「ジェンダー分業の究極のありかたは、『女は生命、男は戦争』」である。男女の自殺率格差を放置し続けることは、その「女は生命、男は戦争」を肯定し続けることだ。生命の存在である女は人命が重視され、戦う性である男は人命が軽視される。

 男女自殺率格差問題を考えないのは、女を他者に追いやることをいつまでも肯定し続けることだ。


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2008/01/03|フィンランドと自殺率格差問題TB:0CM:0

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